【勉強会レポート】島ならではの“子どもの居場所づくり”って?リトケイ中城の「シマ育勉強会vol.2 答志島編」

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2023年8月10日に「シマ育勉強会Vol.2 みんなでつくる子どもの居場所づくり&答志島の子育て環境」をテーマに、離島留学のオンライン勉強会の第2回が開催されました!今回も小学校6年生と1年生の姉妹を育てる編集部の中城がお届けします。

長い長い夏休み期間中は、さて今日はどう過ごそうかと知恵を絞る日々。子どもたちを自由に解き放ち、仕事に専念できる環境って案外少ないことを痛感している私にとって今回のテーマは、とても身近なものでした(というより急務!)。

そんなわけでまずは、答志島(とうしじま|三重県)の概要から。三重県鳥羽(とば)市の離島・答志島は、伊勢湾に浮かぶ約7平方キロメートルの島で、人口約1,800人が暮らしています。主な産業は漁業で、島に住む方の8割が漁業に従事しているのだとか。

答志島で離島留学が始まったのは、少子化で存続の危機に直面した島の中学校を救おうと、住民が有志の団体を立ち上げ、署名運動などの活動を始めたのがきっかけでした。学校や教育委員会と2年間にわたる調整を重ね、2018年に離島留学がスタート。

今回は、答志島の離島留学の発起人でもある市議会議員の濱口正久さんをはじめとする3名のゲストに、離島留学立ち上げの背景から「寝屋子」制度、 そして現在進行形でつくられている居場所「ねやこや」の全貌をレクチャーいただきました。

※このプロジェクトは、子どもたちを取り巻く社会課題を解決することを目的とした日本財団「子どもサポートプロジェクト」の一環です。

文・中城明日香

濱口正久さんは、答志島で生まれ育った生粋の島っ子。存続の危機にさらされた島の中学校のために「寝屋子の島留学」を立ち上げ、現在は市議会議員としても活躍されています。

三好美咲さんは京都大学哲学科を卒業後、子育てや住みやすい場所を探す中で答志島と出会い、2023年の4月から地域おこし協力隊に就任。「ねやこや答志島」で子どもたちの居場所づくりに尽力しています。

正林泰誠さんは、東京大学大学院修士課程に在籍中。転勤族として生まれ育ち、漁村が好きに。なかでも漁師の活気を肌で感じられる答志島に惚れ込み、現在は「ねやこや答志島」のコミュニティ拡大に尽力しています。

独自の文化「寝屋子制度」を生かして信頼関係を育む

そもそも答志島独自の文化「寝屋子(ねやこ)制度」とは、中学校を卒業した男子数人が地域の世話役“寝屋親(ねやおや)”宅で共同生活をする中で、実の親兄弟のように絆を深めるという制度で、鳥羽市の無形民俗文化財にも登録されています。

地域の方にわざわざ子どもを預けるって?と、最初は疑問に思いましたが、島民の8割が従事する基幹産業である漁業は時に命懸け。海と命の安全は、互いを信頼し合ってこそ支え合えるものだとすれば、互いの絆を深めることの必要性も感じられるというもの。

寝屋子制度について熱く語ってくれたのは、自身も経験者である濱口さん

島では兄弟同然の仲間と過ごす中で、日々助け合いながら生きることを学んでいるのです。そうした強い信頼関係を築いてきた「寝屋子制度」をバックボーンに持つ答志島。その風土を生かし、2018年に島を訪れる留学生たちを島の仲間として迎えるため「寝屋子の島留学事業」が創設されました。

地域でつくる、離島留学の拠点「ねやこや答志島」

2022年4月には、かつて土産物店だった建物を活用した「ねやこや答志島」をオープン。「島の教育の魅力化」「高齢者の居場所づくり」を目的としたこの場所は、今回登壇してくださった濱口さんら3名を中心に、地域の人たちの手を借りながらDIYでつくり上げられているそうです。

子どもたちの海洋教育の拠点となる空間として、地域の人々が気軽に立ち寄れる場として、地域ぐるみで場づくりに励んでいます。

朝は子どもたちとお年寄りがいっしょにラジオ体操をするところから始まり、放課後には学校帰りの子どもたちが集まり、地元の漁師さんやお年寄り、大学生たちと触れ合いながら学ぶ場に。時には島のお母さんがつくった食事をみんなで食べたりと、世代間交流を促す憩いの場として活用されています。

「ねやこや答志島」1階平面図。2階部分は、宿泊ができるよう現在進行形で改修中

地域の誰もが参加者であり、立役者。寝屋子制度の経験者であり、答志島の離島留学の生みの親である濱口さん。そして、答志島のカルチャーに価値を感じ、島に移住した三好さんや正林さん。皆さんの活動を通してみると、時代の変化とともに寝屋子制度の役割も変化してはいても、その本質はしっかりと受け継がれていることが伺えます。

「誰もが気軽に通えるここは、屋根の付いている公園」

「ここは、島の誰もが気軽に集える“屋根の付いている公園”です。人に頼ったり巻き込んだりしながら助け合っていくことを島で学んでほしい」と語ってくれた濱口さんの言葉には、島の宝である子どものためなら一肌脱ぐ、そんな粋な心意気が滲みます。

「寝屋子の島留学」では、2023年度から3日間のお試し体験を開始(※身の回りのことができる小学校5年生〜中学校2年生を想定)。2024年度からは、「ねやこや答志島」の2階で寝泊まりできるように改装中だとか。地域の人との関わり合いの中で、子どもたちを育てる体制を整えています。

島の人々が集う朝のラジオ体操は「ねやこや答志島」ではお馴染みの風景

「ねやこや答志島」を拠点に始まる答志島の離島留学。人と人との関わり合いが極端に少なくなった都市型のライフスタイルでは、なかなか得ることのできない豊かな可能性の輪が広がっています。

次回のシマ育勉強会は9月28日(木)に開催!

※募集は終了しました

次回のシマ育勉強会は、9月28日(木)の20時に開催します。テーマは、“子どもも大人も集まれ!地域力を育む島のコミュニティ図書館”。

島根半島沖に位置する隠岐島前(どうぜん)の島々より、中ノ島(なかのしま|島根県)と西ノ島(にしのしま|島根県)の図書館で司書を務める磯谷奈緒子さんと真野理佳さんをゲストにお迎え。

司書であるお二人に、図書館を拠点に島の内と外の人々をつなぎ、島の学びや暮らしを豊かに育む、ユニークな図書館活動についてお話しいただきます。

参加は無料。お申込みいただいた方は、後日アーカイブでの視聴も可能です。ぜひご参加ください。

<こんな人におすすめ!>

  • 離島留学に興味のある方
  • 離島留学先を探している方
  • 他の島で「離島留学」の受け入れを行っている
  • 島の子育て環境に興味のある方
  • 子育て環境を向上させるためのヒントを求めている方

ゲスト

\図書館を島の人たちの暮らしや心のよりどころに/
海士町中央図書館館長 磯谷奈緒子さん
鹿児島出身。2000年、商品開発研修生として海士町へ移住。島の男性と結婚し、子育ての傍ら友人らとカフェを運営。2010年より海士町中央図書館勤務。トークイベントや映画の上映会、在来品種の種を貸し出す「シードライブラリー」など、図書館を拠点に住民と共につくるさまざまな企画を形にしてきた。
>>海士町中央図書館参考記事

\老若男女が集ういかあ屋は、すごく自由な図書館/
西ノ島町コミュニティ図書館いかあ屋司書 真野理佳さん
隠岐の島町出身。西ノ島出身の夫と結婚し西ノ島へ。小学校の教員を経て、図書館の前身である公民館図書室に勤務。2018年の西ノ島町コミュニティ図書館いかあ屋開館を機に、司書の資格を取得。いかあ屋は西ノ島弁で「行こうよ」という意味の言葉。 誰もが行きたくなるような場所に、との思いが込められている。
>>西ノ島町コミュニティ図書館いかあ屋参考記事

司会

離島経済新聞社統括編集長 鯨本あつこ
NPO法人離島経済新聞社 代表理事、有人離島専門メディア『ritokei(リトケイ)』統括編集長。「島の宝を未来につなぐ」ことを目的に、国内400島余りの有人離島地域の情報発信および地域振興のサポートを行う。美ら島沖縄大使。一般社団法人石垣島クリエイティブフラッグ理事。

【シマ育勉強会Vol.3(海士町・西ノ島)イベント概要】

イベント名:シマ育勉強会Vol.3 子どもも大人も集まれ!地域力を育む島のコミュニティ図書館(海士町・西ノ島)
日時:2023年9月28日(木)20:00〜21:00
会場:Zoom MTGによるオンラインイベント(事前申込の上URL連絡)
定員:30人(先着順)
参加費:無料

内容:

  • 海士町中央図書館の活動紹介
  • 西ノ島町コミュニティ図書館「いかあ屋」
  • 質疑応答

ゲスト:
海士町中央図書館館長 磯谷奈緒子さん
西ノ島町コミュニティ図書館「いかあ屋」司書 真野理佳さん
司会:
離島経済新聞社統括編集長 鯨本あつこ

参加申し込み:
お申し込みフォームよりご連絡ください。当日のオンライン会議室のURL(Zoom)をご案内いたします。
>>シマ育勉強会Vol.3お申し込みフォーム ※募集は終了しました

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