「先生の人材育成」と「経営目線」が学校を支える! 子どもと地域の未来のために

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子どもが育つ環境には学校が不可欠で、魅力的な学校を求めたいものです。しかし、地域外から赴任してくる先生が集まる島の学校には特有の問題もあります。

今回は、屋久島(やくしま|鹿児島県)でESD教育を推し進める福元豪士さんと、隠岐諸島(おきしょとう|島根県)で日本初となる「学校経営補佐官」というポジションから「高校魅力化プロジェクト」を推進する、大野佳祐さんに伺った「学校を支える工夫」を取り入れる事例をご紹介します。

※この記事は『季刊ritokei』44号(2023年11月発行号)掲載記事です。フリーペーパー版は全国の設置ポイントにてご覧いただけます。

子どもたちの学びを担う先生の「島を知らない」問題

より良い「シマ育」づくりのため考えたいことのひとつに、子どもたちの学びを担う先生や学校に関する問題がある。離島地域の公立学校で教壇に立つのは、1〜3年の任期で島外から赴任してくる先生がほとんど。

それゆえリトケイ読者の声を集めると、島が好きで、島の学校を志望してやってくる先生がいる一方、「島をネガティブに思っている先生もいる」「先生の声が子どもたちに直接影響してしまう」などの問題が、少なからずあがってくる。

屋久島で生まれ育ち、特定非営利活動法人 HUB & LABO Yakushima(以下、HL)で環境教育や親子の自然体験を推し進める福元豪士(ふくもと・たけし)さんもそのひとり。

「学校の先生は人材育成をするけれど、学校の先生は島のことを知らない」という問題に対して「先生の人材育成をする」役割を担っている。

「屋久島町には僕を含めて6人の屋久島型ESDアドバイザーがいます。学校から相談があったら答えるシステムで、総合学習の年間プログラムについての相談に乗ったりしています」(福元さん)

持続可能性を追求する大人が持続可能な教育のハブに

ESDはEducation for Sustainable Developmentの略で「持続可能な開発のための教育」と訳される。福元さんらESDアドバイザーが、学校と地域社会をつなぐハブとなり、持続可能な社会をつくる人材を育む教育づくりをサポートしているのだ。

例えば、社会科の授業なら教科書に載る事例だけでなく、足元にある島の経済産業を学ぶことがESDとなる。しかし、赴任してきた先生だけではキーマンとつながることができないため、ESDアドバイザーが「こういう人がいますよ」と地域につなぐ。

HLには、福元さんら子育て世代の島出身者と移住者がいて、日頃から親子向けの自然体験プログラム「OYAKO LABO」や、非認知的能力を伸ばす放課後の場づくり「島子屋」、島の住民と未来を語る「屋久島未来ミーティング」などを企画している。

地域の未来を追求するキーマンと学校が連携することで、短期間で入れ替わってしまう先生の問題を超え、島への愛着や誇りを醸成できる公教育が叶えられるのだ。

長期的な教育魅力化に向けた学校経営補佐官という一手

「高校魅力化プロジェクト」により統廃合の危機からV字回復を果たし、人気校となった島根県海士町の県立隠岐島前高校では、2019年に日本初となる「学校経営補佐官」というポジションが設置された。

初代学校経営補佐官のひとり大野佳祐(おおの・けいすけ)さんは、「学校と地域とが一緒になって魅力的で持続可能な地域と学校をつくる」というビジョンを掲げながらも、短期間で入れ替わってしまう学校長や先生だけでは、持続可能な学校経営が叶えられないことを課題と考えていた。

「島根県の県立高校は、異動のルールにより学校長であっても任期は長くて3年。すぐに入れ替わってしまう学校長や先生だけでは『魅力的な学校』にすることはできても、『持続可能なものにする』という視点がなかなか持てなかったんです」(大野さん)。

「高校魅力化プロジェクト」は現在、海士町・西ノ島町・知夫村からなる隠岐島前全体の教育魅力化としてアップデートされ、その対象も高校から地域全体へと広げられている。

構想のベースにある「隠岐島前教育魅力化構想」は、島前高校の全校生徒と全教職員、地域住民、有識者、OB・OGが描くビジョンから策定した「みんなの夢」の結晶ともいえる。

「運営」ではなく「経営」 学校長の意思決定を支援

学校経営補佐官には「経営」の2文字が付く。2名が配置された補佐官のもう一人は、株式会社リクルートキャリア初代代表取締役社長を務めた水谷智之(みずたに・ともゆき)さんが担う。

公立学校では決められた予算のなかでやりくりをする「運営」スタイルが一般的だが、島前高校の魅力化は島前3町村が予算をひっぱり出し、魅力化のための経営ができたから実現できたと水谷さんは考える。

持続的な地域づくりには魅力ある教育環境が必要。そのためには、長期的な視点で学校経営に携わりながら、学校長の意志決定をサポートできる外部人材も必要。

大野さんは学校経営補佐官の仕事を「地域、社会、世界と学校とをつなぐコーディネーターとしての役割はもちろんのこと、町を、国を、世界を巻き込みながら、学校の経営陣と一緒になって経営資源を集め、勇気ある意志決定の一助となること」と考える。

島前3島には近年、15年前に高校魅力化がスタートした当時、高校生だった若者たちが社会を支える一員となり戻ってきている。教育魅力化はまさに「子どもたちが帰ってくる島」をつくる取り組み。学校を支えることが持続可能な地域づくりに直結することを、隠岐諸島の事例は示している。

【関連サイト】
特定非営利活動法人HUB & LABO Yakushima
https://hublaboyakushima.mystrikingly.com/
高校魅力化プロジェクト
https://miryokuka.com/

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