子どもは「自信」、親は「幸せな時間」を得た。海士町の「親子島留学」体験談【離島留学への道】
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島根半島の沖合約60キロ・隠岐諸島に浮かぶ中ノ島(なかのしま)は、人口2,224人(2020年6月末時点)の島。町名である海士町(あまちょう)の名で知...
佐渡島(さどがしま|新潟県)は日本海側最大の離島で、島の面積は約855平方キロメートル、島内に約55,000人が暮らしています。教育の場としては小学校が22校、中学校が13校、高校が5校あり、離島留学を受け入れているのは、内海府小中学校、松ヶ崎小中学校の2校です。
シマ育では今回、11月3~5日の3日間、東京・大阪在住の7〜9歳の子どもたち3人とその保護者4人の計7人を対象に、佐渡島の子育て環境を見学・体験するモニターツアーを実施。
内海府小中学校の文化祭・学校説明会への参加のほか、「親子で佐渡島に離島留学をしたらどんな暮らしになるか」がイメージできるように、郷土について学べる施設や、学校以外の子どもの居場所や移住支援拠点、病院、スーパーなどをめぐりました。離島留学を検討する3組の親子が体験した佐渡島モニターツアーの様子を、新潟市在住のライター・ヤマシタナツミさんがレポートします。前後編の前編です。
>>後編:「新潟・佐渡島の子育て環境モニターツアー(後編):地元の買い物体験と文化祭参加」はこちら
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11月3日、シマ育・佐渡島モニターツアーの初日がやってきました!参加者のみなさんに出発前の期待や不安をお聞きしたところ、次のような思いでいたことがわかりました。
【期待】
・地域の人のお話を聞くこと、佐渡の暮らしを体感できることがとても楽しみです。
・佐渡島は世界遺産の有力候補でもあるので、歴史を調べながら当日を迎えました。
・佐渡の交通事情を調べたらわかりにくかったので、ツアーで行けるのはありがたいです。【不安】
・子どものアレルギーがあること、病院などの設備について不安を感じていました。
・ツアー内容が子ども向けではないため、子どもは大丈夫かな?と思っています。
・一緒に参加する人たちがわからなくて不安でした(結果的には取り越し苦労でした)。
今回のツアーでは佐渡島の中央部、南部、北端の集落・鷲崎と広範囲を移動するため、両津港からはジャンボタクシーに乗車。タクシーの運転手さんから、各地の名所にくわえてトキの鳴き真似まで、さまざまなことを教えてもらいながら、島をめぐっていきました。
行程は、このような内容です。
1日目 | |
13:35〜14:42 | 佐渡汽船ジェットフォイル(新潟港→両津港) |
15:30~17:00 | 佐渡UIターンサポートセンター |
17:30〜(宿泊) | カフェバー&GUESTHOUSE憩ikoi |
2日目 | |
09:00(出発) | カフェバー&GUESTHOUSE憩ikoi |
09:30~11:00 | 西三川ゴールドパーク |
12:00~13:30 | たまりば・子ども未来舎 りぜむ |
13:45~14:30 | JA新潟厚生連 佐渡総合病院 |
14:40~16:30 | フレッシュ・マツヤ 金井店/キング サンモール店/メレパレカイコ |
16:30〜(宿泊) | 旅館よしや本館 |
3日目 | |
09:45(出発) | 旅館よしや本館 |
10:00~14:45 | 佐渡市立内海府小学校・中学校 |
16:05~18:35 | 佐渡汽船カーフェリー(両津港→新潟港) |
19:30(到着・解散) | JR新潟駅 |
1つ目の目的地は、ものづくり拠点「馬川亭」の一角にある「佐渡UIターンサポートセンター」です。入り口は古民家の佇まい、内側は木を使った温かみのあるインテリア。思わず写真を撮りたくなる、素敵な雰囲気の建物でした。まわりは草むらや田んぼに囲まれたのどかな場所で、好奇心いっぱいの子どもたちは早速探検に出発しました。
子どもたちが外遊びを楽しんでいる間に、移住コーディネーターの熊野礼美さんから、佐渡の暮らしについてお聞きしました。最初のお話は冬のこと。「冬の暮らしが思っていたよりもきつかったと、佐渡を離れていく方が少なくないんです」と熊野さん。
佐渡は豪雪地ではありませんが、冬にはスタッドレスタイヤが必要なくらい雪が降ること、風が強いこと、船が欠航することがあるそうです。また日本海側特有のくもり空が続く中で「気持ちがうつうつとしてしまってつらい」という声もあるとか。移住を決める前に冬を経験してみた方がよさそう!ということがわかりました。
熊野さん自身も移住者ということで、移住したきっかけを教えていただきました。兵庫県の姫路で生まれ育った熊野さんは、都会に憧れて大阪、神戸に住んだことも。けれど「子どもができたときに、自然豊かな場所の方がたくさん教えてあげられることがあるのでは」と考え、佐渡への移住を決めたそうです。
その他、参加者からの質問にもたくさん答えてもらい、水が豊かなこと、お米や野菜、魚介類がおいしいこと、地域で根付いている「鬼太鼓」のこと、日常的な買い物ではとくに不便がないことなどを教えていただきました。
中でも面白いと思ったのは、集落によって住んでいる人の個性がちがうこと。漁師のまちには声が大きくてはっきりと意見を言う人が多く、農家のまちは我慢強くておとなしい感じの人が多いそうです。佐渡金山の開発が盛んだったころに、士農工商、さまざまな職業の人たちが佐渡島に集まった歴史とも関係しているかもしれませんね。
※利用の際には事前に予約が必要となります。
移住者目線でのお話を聞くことができて、とても勉強になりました。移住者や現地の方と交流する中で得る情報は重要だと思います。移住先の候補としては考えていなかったのですが、随分と気持ちが変化しています。(Kさん/50代/女性)
「UIターンサポートセンター」の周囲は視界がひらけていて、子どもがはなれて遊んでも不安感が少ないと思いました。また、地域の方が子どもたちをさりげなく気にかけてくださり、ありがたかったです。(Iさん/40代/女性)
参加者同士、佐渡の自然のなかで会ったおかげか、とけこみやすく感じました。自然はすごい!!!海が近くにあるのも、とても素敵でした。(Yさん/40代/女性)
はじめて佐渡に来た参加者にとって、移住者の先輩から話を聞けたことはとても勉強になったようです。充実感いっぱいでゲストハウスに到着、食事をしながら1日をふりかえったり、参加者・スタッフで交流した後、翌日に備えて休みました。
※「カフェバー&GUESTHOUSE憩ikoi」のInstagramアカウントはこちら(@20201101ikoi)
ツアー2日目のスタートは、佐渡島南西部にある「西三川ゴールドパーク」。この施設は佐渡最古の砂金山跡地に建っており、金の歴史が分かる展示室と砂金採り体験施設があります。金運アップの大黒天に迎えられ展示室に入ると、佐渡の金に関する年表や、純金の装飾品などを見ることができました。
資料を見て歴史に触れたところで、今度は体験です。職員さんにコツを教えてもらったら、一人ひとりザルを手にして砂金採りにチャレンジ!
はじめのうちは「水が冷たい〜」「どれが金?」と戸惑う声もありましたが、終わるころには「10個とれたよ」「大きいの見つけた!」とうれしそうな姿が見られました。
砂金採りの後は、「たまりば・子ども未来舎りぜむ」へ。この日もたくさんの子どもたちが来ていました。「りぜむ」は2023年1月にスタートした新しい施設。施設ができた経緯について、潟上未来会議代表理事の板垣徹さん、理事で新潟大学佐渡自然共生科学センター准教授の豊田光世先生からお話を聞きました。
「りぜむ」のある潟上集落では、過疎高齢化に負けない明るい未来を創ろうと「潟上未来会議」というワークショップをスタート。その中で「未来を担う子どもたちの遊び場をつくろう」という声が出てきたのだとか。
「りぜむ」のはじまりは、常設の遊び場づくりをめざしたこと。広い庭のある空き家(屋号・利左衛門【りぜむ】)をお借りして整備を進めていき、日本財団の「子ども第三の居場所」事業の助成を受けて「子ども未来舎りぜむ」が立ち上がったそうです。
潟上集落だからこそできる形を考え、農家流子ども食堂や、地域内にいる保育士さんたちと連携して場づくりを行い、平均すると1日に20人ほどの子どもたちが利用する場になっているそうです。
日本財団の方からは「こんなに子どもたちが中心になっている場所はなかなかないですね」という言葉をいただいたそう。この日も子どもたち主催のゲーム大会が行われていて、とてもにぎやかでした。
お話を聞いた後は、子ども食堂でランチをいただきました。メニューは近くで採れたタケノコや野菜を使った春巻き、キャベツ、釜で炊いたご飯に味噌汁。ご飯はお好みでおにぎりにできるようにと、海苔や具も用意されていました。
ランチ後には「りぜむ」で常勤スタッフとして働く保育士の三浦涼平さんや、豊田先生と同席して、参加者が日頃どんな思いで子育てをしているかや、「りぜむ」に来る子どもたちのことなど、さまざまな意見交換をすることができました。
その頃子どもたちはというと…この日は雨で遊具が濡れてしまっていたのですが、遊べそうな場所を探して元気に走り回ったり、地元の子どもたちの発案で行われているゲーム大会に参加したり。子どもたちそれぞれに「りぜむ」ならではの時間を過ごしました。
最後に、近くにいた人で集まり記念撮影。のびのびと遊んでいた子どもたちは、遊びを切り上げるのに少し時間がかかりました。時間を忘れるほど夢中になって遊べる、子どもたちの第三の居場所。これからも地域の人とつながりながら続いてほしいなと思いました。
今回ツアーに参加しなければ、「りぜむ」を知ることができなかったと思うので、知れてよかったです。子どもをのびのび遊ばせていただきありがとうございました。(Iさん/40代/女性)
「子ども未来舎りぜむ」は、子どもがのびのび遊べる、とても素敵な居場所でした。また豊田先生が研究されている「子どもの哲学」にも興味があるので、親としても魅力を感じました。(Kさん/50代/女性)
※「たまりば・子ども未来舎りぜむ」のメールアドレス:katagami.mirai@gmail.com
「りぜむ」の後に伺ったのは佐渡島中央部にある佐渡総合病院。小児科医の岡崎実先生に院内をご案内いただきました。
小児科を案内いただいたとき、参加者の子どもの一人が何かを見つけた様子。岡崎先生がすぐに気がついて、楽しそうなおもちゃを見せてくれました。参加した保護者からは食物アレルギーについての質問があり、岡崎先生から専門的な回答をいただきました。参加者は、先生の子どもたちへの対応や知識に、「これなら何かあっても対処できそう」という感触を持てたようです。
そして今回は特別に、ドクターヘリのヘリポートまで見せていただきました。ほとんどの病気や怪我は佐渡総合病院で対応できますが、特殊な手術については新潟市内の病院で行うためドクターヘリを使えるようにしているそうです。新潟市の大学病院までは約20分。万が一のことを思うと、こうした設備があるのは心強いですね!
大きくて綺麗な病院と整った医療機器、いざという時のヘリポート、なによりも優しい小児科の先生の対応は移住を検討する上で大きな安心感を与えてくれます。(Kさん/50代/女性)
>>後編:「新潟・佐渡島の子育て環境モニターツアー(後編):地元の買い物体験と文化祭参加」はこちら
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ライター:
ヤマシタナツミ。新潟市生まれ。新潟大学農学部卒。「人と地域の未来をつむぐ」をテーマにライティング、イラストレーション、小説創作をしています。Webサイトはこちら。
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