新潟・佐渡島の子育て環境モニターツアー(後編):地元の買い物体験と文化祭参加

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佐渡島(さどがしま|新潟県)は日本海側最大の離島で、島の面積は約855平方キロメートル、島内に約55,000人が暮らしています。教育の場としては小学校が22校、中学校が13校、高校が5校あり、離島留学を受け入れているのは、内海府小中学校、松ヶ崎小中学校の2校です。

シマ育では今回、11月3~5日の3日間、東京・大阪在住の7〜9歳の子どもたち3人とその保護者4人の計7人を対象に、佐渡島の子育て環境を見学・体験するモニターツアーを実施。

内海府小中学校の文化祭・学校説明会への参加のほか、「親子で佐渡島に離島留学をしたらどんな暮らしになるか」がイメージできるように、郷土について学べる施設や、学校以外の子どもの居場所や移住支援拠点、病院、スーパーなどをめぐりました。離島留学を検討する3組の親子が体験した佐渡島モニターツアーの様子を、新潟市在住のライター・ヤマシタナツミさんがレポートします。前後編の後編です。

>>前編:「新潟・佐渡島の子育て環境モニターツアー(前編):先輩移住者の声と病院見学」はこちら

2日目:生活には欠かせない、地元スーパー体験

実際移住するとなると、気になるのが買い物の場所。今回は「フレッシュ・マツヤ」「キング」という、2つの地元スーパーに行くことができました。

島のスーパーと言えば地魚コーナー。この日はイナダ、ブリ、カンパチ、カレイ、ヤリイカなどが入荷していました。イナダの値段にびっくり!

佐渡汽船内で見かける佐渡乳業の牛乳も、1Lサイズや低脂肪牛乳など種類が豊富です。

新潟らしさを感じるものとしては、食用菊のかきのもと、いごねり、ささだんごの素など。最近では食べない人もいますが、長年新潟に住んでいる私にとってはなじみのある品々で、ツアーの参加者に注目してもらえてうれしかったです。

子どもたちに人気だったのはガチャガチャでゲットした光るヨーヨー。大人たちがスーパーを見ている間、楽しそうに遊んでいました。

「地元スーパー」での参加者の感想

各地でスーパーを散策するのは、私にとって一番の楽しみ。移住したときの物価の目安にもなるので買い物体験ができてよかったです。(Kさん/50代/女性)

「フレッシュ・マツヤ 金井店」の場所

「キング サンモール店」の場所

2日目:おいしいものを持ち寄って、わかちあった鷲崎の夜

2日目の行程を終えた後、海沿いの集落・虫崎の高台にあるレストランに立ち寄りました。夜の懇親会でいただくオードブルをひきとり、宿に向かいます。

「メレパレカイコ」の場所

2日目の宿・懇親会会場の「よしや本館」に到着。こちらではズワイガニとカレイの煮付けをご用意いただきました。写真は一人前です!

懇親会に来てくださった地元のみなさんからも、料理やおつまみをご用意いただきました。手づくりのかき餅、サラダ、漬物、柿など…この地ならではのご馳走に感激して、写真を撮る参加者も。

テーブルが賑やかになったところで、お待ちかねの乾杯!順に自己紹介をしながら地元の方とツアー参加者とで交流を深めていきました。

鷲崎はもともと漁師町。男性のコミュニティが中心でしたが、移住者の女性がはじめた習字教室が、女性のコミュニティになりつつあるとのこと。受け継がれてきたものと、新しいものが混ざり合って、今の鷲崎があるのですね。

持ち寄ったものをみんなでわかちあい、語り合う時間の中で、鷲崎で暮らすイメージが湧いてきた感じがしました。懇親会の翌日、ツアー最終日は、いよいよ内海府小中学校の見学です!

「鷲崎の夜」での参加者の感想

鷲崎で暮らすみなさんから、移住の話、暮らしの話、学校の話を聞けてよかったのと、参加者同士の情報交換からも、新たな知識、気づきを得られました。(Yさん/40代/女性)

親としては、普通の旅行では行かないような、佐渡島の北部地域に行けてよかったです。一方で子どもたちにとっては、移動時間は長く疲れがたまってしまった面も。さまざまな場所を見て回りたい気持ちもありますが、子どもたちのことを考えると、バランスがむずかしいと思いました。(Iさん/40代/女性)

「よしや本館」の場所

3日目:生徒、地域の人、みんなでつくる文化祭&学校説明会

ツアー3日目はモニターツアーのメインイベント、文化祭と学校説明会です。内海府小中学校はよしや本館から歩いて10分ほど。のどかな風景を眺めながらみんなで歩いて行きました。

内海府小中学校の文化祭をひとことで言うなら、「小学校と中学校と公民館の文化祭を一緒に行っているイメージ」でしょうか。鷲崎で暮らす子どもと大人の力作が展示されており、生徒の家族と地域の人たちみんなが熱心に鑑賞していました。

文化祭の中では「芸能発表会」というステージでの発表があり、「鬼太鼓」や「鷲崎ふれあい音頭」、「内海府カンゾウ太鼓」、「海府太鼓」など地域の伝統芸能のほか、なわとび、合唱、ピアノ演奏、ダンスや演劇、コントまで、多彩な舞台を見ることができました。

印象的だったのは、1人の生徒さんがいくつもの演目で発表していたこと。活躍の場がたくさんあるのですね!

文化祭の締めくくりは、全員での万歳三唱です。生徒も地域の人たちも、モニターツアーの参加者たちも、みんなで声を合わせました。

文化祭の後は、魚さばき体験が行われました。先生のレクチャーの後、自分の手で魚をさばくため、参加者たちは真剣な表情で先生の手元を見つめます!

はじめての魚さばきは、子ども以上に大人がドキドキ…?内海府小学校では小学校3年生から経験を積んで、みんなが魚をさばけるようになっていくのだとか。ドキドキしながらも、繰り返し手を動かしていくことが大切なのですね。

この日のランチは手巻き寿司。体験でさばいた魚を酢飯、海苔と合わせてみんなでいただきました。自分の手でさばいた魚の味は、ひと味ちがったのではないでしょうか。

午後、ツアー参加者の子どもたちは在校生たちとの交流会で、体育館でフリスビーや鬼ごっこをしました。小学生から中学生まで、年齢のちがいを越えて遊ぶ様子は、小さな学校ならではの光景かもしれませんね。

子どもたちの交流会と並行して、大人を対象にした学校説明会と、先輩移住者との交流会が行われました。学校説明会では、体験授業や課外活動、地域のイベント、自校給食などの紹介があり、「地域との交流を行い、内海府には帰る場所があると思ってもらえたら」という地域の思いをお聞きしました。先輩移住者との交流会では、普段の買い物や、住んでいる家のことなど、鷲崎で実際に暮らして感じたことを含めて、伺うことができました。

「文化祭&学校説明会」での参加者の感想

学校は子どもが少ないのでサポートが行き届いていて、一人ひとりを大切にしていることがわかりました。文化祭で鬼太鼓を見れたことは貴重でした。(Kさん/50代/女性)

子どもは魚さばきと、鬼ごっこが楽しかったと言っていました。(Iさん/40代/女性)

佐渡の最北端に行けて良かったです。小学校もとても素敵でした。地元の人の思いなどを聞いて、たくさんの人に鷲崎を知ってもらいたいと思いました。移住するというのは勇気もいるので、もっと気軽に体験できる環境があったらいいなと思いました。(Yさん/40代/女性)

「内海府小中学校」の場所

※文化祭・学校説明会の紹介動画をTikTokやYouTubeで見られます。詳しくは下記アカウントをご覧ください。TikTok(@sadoichischool)YouTube(@uchikaifu)

3日目:モニターツアーで見つけた仲間と佐渡島

3日目の佐渡島モニターツアーの終わり。参加者同士、2日前に知り合ったとは思えないくらい打ち解けた雰囲気になっていました。佐渡島を体験した仲間同士、交流を深めてもらえたようでよかったです。別れのあいさつは元気いっぱいのハイタッチ!

3日間のモニターツアーを終えた参加者のみなさんに、ツアー全体についてもふりかえってもらいました!その感想を紹介してレポートを締めくくりたいと思います。離島留学に興味を持っているご家族や、受け入れを考える地域のみなさんの発見につながれば何よりです。

モニターツアー全体の参加者の感想

佐渡は広くて2泊3日じゃ足りません(笑)。自由時間がもう少し欲しかったですが、全体としては満足度が高く、今後も何らかの形で佐渡に関わりたくなりました。参加人数はちょうどよく、似た軸にいながらも、少しずつ価値観や環境が違う人が集まっていて、仲よくなれました。参加前から参加者同士や事務局のみなさんと連絡を取れる形だと、もっと便利なのではと思いました。(Iさん/40代/女性)

さまざまな理由から移住を考えていますが、香害に悩んでいるので、香害のない所に住みたいという思いもあります。 今回の旅では香害を感じることなく過ごせました。感謝しています!!(Yさん/40代/女性)

現地を訪れることでネットでは知り得ないことをたくさん知ることができました。移住者から話を聞いていくなかで、各地域で受け継いできた文化や取り組みと、移住者のバックグラウンドやキャリアの間には「ご縁」があるように思いました。事前リサーチは必要ですが、「現地でご縁を感じられるかどうか」も大切なように思います。(Kさん/50代/女性)

ライター
ヤマシタナツミ。新潟市生まれ。新潟大学農学部卒。「人と地域の未来をつむぐ」をテーマにライティング、イラストレーション、小説創作をしています。Webサイトはこちら。

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