新潟・佐渡島の子育て環境モニターツアー(後編):地元の買い物体験と文化祭参加
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佐渡島(さどがしま|新潟県)は日本海側最大の離島で、島の面積は約855平方キロメートル、島内に約55,000人が暮らしています。教育の場としては小学校...
2020年発行のリトケイ特集「子どもは島で育てたい」(>>”守姉”の島。多良間島にみる「人間本来の子育て」【特集|子どもは島で育てたい】)で、沖縄・多良間島(たらまじま)の共同養育文化やアロマザリングの重要性を紹介した発達心理学者・根ケ山光一先生に、改めて子育て環境としての島の価値について聞きました。
※この記事は『季刊ritokei』44号(2023年11月発行号)掲載記事です。フリーペーパー版は全国の設置ポイントにてご覧いただけます。
地域の子育て環境は、それぞれの環境に適合したかたちでできあがります。多良間島(たらまじま|沖縄県)の「守姉」(※)が生まれた背景には、人頭税に苦しめられた時代の、昼間は両親ともにずっと畑に出て、帰っても寝るまで布を織るような厳しい暮らしがありました。
※ 血縁関係のない間柄、もしくは遠縁の少女が小さな子どもの世話役になる多良間島の風習
そこで、子育てをみんなでサポートしあうアロマザリング(※)が発達し、むしろ人間にとって望ましいソーシャルキャピタルとなったのです。それは「乏しさは豊かさだ」ともいえる幸せなことでした。
※ 親以外の人が子育てに積極的に関わること
小さな島では、人が生きて、愛して、病気になって、死んでというすべてや、政治や経済、学校、警察、老人施設などのすべてを一望できます。
人間の生き方の全貌が見え、「人間ってこうだよな」ということも学ばせてもらえますが、都会にはそれがありません。都会の人間は役割行動をとっているだけで、人間的な部分が見えず、生きる実感が得られる環境も失われているのです。
都会生活はすごくきれいで美しく、整っていて気持ちが良いのですが、その気持ちよさは人工的なもの。実際の世界には、もっと暑かったり、寒かったり、臭かったりという基礎感覚があります。
身体の痛みとか痒さを感じさせないよう、負荷を取り除くことが快適であり、幸せだと思われていますが、それでは身体は無能化されてしまいます。
汗をかいたり、震えたり、身体を使って生きているという実感を遠ざけてしまうのです。人間は怠惰なので不快をつい遠ざけようとしてしまいますが、そればかりを求め続けていて良いのでしょうか?
島の人々のなかには、島の暮らしを否定する人もいます。かつては生活が貧しく、命がけで海を渡っていた時代もあったので、都会生活に魅力を感じる選択も否定はできません。
しかしその先にある都会では、身体を無能化させるような環境がつくられていて、行政も結果的にそうした社会の仕組みをつくってきたわけです。
島にはきれいな空気や自然があります。水のなかで泳いだり、風に当たったり、身体を使って生きるよろこびや、その実感を得ることができる場所なのです。
「シマ育」で島と都会の親子がつながるにしても、島の過疎を止めるだけに行われることではないと思います。自然を求めてやってくる都会の親子と、クマノミとイソギンチャクのように相互に利益を与える関係になるといいですよね。
都会の保育園で子どもたちの観察をしていても、5歳くらいの子どもは園児同士で小さい子の保育をしています。子どもは子ども同士のネットワークのなかで、相互調整しながら自律的に付き合い方を編み出していくのです。
ですから、島で都会の子どもたちを受け入れる場合にも、大人が受け入れ、プログラムをつくるのではなく、子どもの集団に投げ入れ、そこで関係を調整するのがよいでしょう。
子どもには残酷な面もときにはありますが、今日喧嘩しても明日仲良くできるような、大人とは違う付き合い方ができます。
こども家庭庁の方針には「こどもは家庭で見るのが一番」というベースがありますが、僕は研究者として反対しています。「こどもまんなか社会」では、子どもは家庭の真ん中ではなく、社会の真ん中に置く必要があるのです。
子育ては地域で行い、地域に子どもをリリースする。そうするとたまにケガをするようなことも起こりますが、それを拒否せずに認める。親がそうした度量を持つことが大切なのです。
お話を伺った方
根ケ山光一(ねがやま・こういち)
発達心理学者。早稲田大学名誉教授。専門は発達行動学。NPO法人保育・子育てアドバイザー協会理事長や乳幼児医学・心理学会理事長も兼務。著書に『アロマザリングの島の子どもたちー多良間島子別れフィールドノート』(新曜社)など
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